小論文の勉強ってどうやるの?

query_builder 2023/10/21
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 近年、入試の形が大きく変わってきています。特に大学入試においては、志願者の能力を従来のペーパーテストの点数によって評価するのではなく、今までの経験や興味関心を含めた様々な観点から評価する試験(総合型選抜・学校推薦型選抜)を採用する大学が増えてきています。(2022年度の入試では、一般選抜が43.3%、学校推薦型が26.9%、総合型が16.8%でした。)

 

 よって今後、今まで以上に「プレゼンテーション」や「小論文」といった能力が求められていくでしょう。 特に小論文は出された課題を理解する(読解力)、課題に対して自分の意見をまとめて(思考力)、それを論理的に記述する(論述力)など、総合的な能力が求められます。


 しかし文章を書くことが苦手で、「どうやって書いたらいいのか分からない」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。以下では小論文の勉強の仕方などについて紹介していきます。

「文章」を書くということ

「感想文」と「小論文」は違う

 千葉大学教育学部で教員養成に長年携わってきた宇佐美氏は文章を書く目的を次のように述べています。「文章を書くこと、つまり作文は、ある他者に読ませある影響を与える目的でなされるべきものである。この目的を実現し得る文章が良い文章なのである。」


 つまり、入試においては私たちが書いた文章を読んだ読者(合否を判断する試験官)に、何らかの感想や変容をもたらさなければなりません。文章は読者に影響を与えるために書くものなのです。


【注】宇佐美寛『私の作文教育』(さくら社、2014年)

YesかNoかをはっきりと

 では、読者に影響を与えるための文章を書くにはどうしたらいいのでしょうか。まず第一に自身の主張(意見)をはっきり書くことが大切です。そして第二に、その主張の根拠(理由)を書くことです。根拠のない主張は筆者に「感想」になってしまいます。


【例文1】感想文

「今年の夏は、今までで一番暑かったと思う。」


 【例文1】では今年の夏の酷暑を訴える文章のように読めます。しかしこれでは「小論文」とは言えません。  


【例文2】小論文

「今年の夏は、今までで一番の暑さだった。気象庁の発表によると、1898年から統計を開始した日本の平均気温偏差は過去最高を記録した。また各地で最高気温30℃以上の真夏日、最高気温35℃以上の猛暑日が連日観測され、東京では7/6~9/7の64日間真夏日が続いたからだ。」


 【例文1】と【例文2】の違いはなんでしょう。第一に、主張が明確に書かれている点です。「~思う」「~考える」「~であろう」といった主観的な曖昧な表現を使っていません。

 文章を読ませて、言葉によってそれを読んだ読者の感情を揺さぶらなければなりません。そのためには、はっきりとした明確な言葉で相手に訴えることが重要です。  


 また第二に、「暑さ」への根拠が書かれています。「気象庁の発表によると~」とあるように、客観的なデータを元にして自身の意見を主張していることが伝わります。また「1898年」「平均気温偏差」といった数字や固有名詞を使うことで、さらに具体的な説得力のある文章になっています。

【勉強法】

教科書に掲載されている評論文(説明文)をお手本にして、原稿用紙に書き写しましょう。



 上手な文章を書くためには、上手な文章をマネすることが最善の方法です。 たとえば現行高校教科書に掲載されている「水の東西」は、対比や抽象・具体といった表現を学ぶのに最良の教材です。またそれを原稿用紙に書き写す行為を行うことで、原稿用紙の使い方や論の展開などが身につきます。

 心理学者の今井氏は「他者の行為を分析し、解釈し、心の中でその動きをなぞり、それを実際に自分の身体を使って繰り返すことが、人を模倣して学ぶときには、なくてはならないことなのである。これは運動に限らない。言語の習得も同じだ。」と述べています。真似ることが学びにつながるのです。


【注】今井むつみ『学びとは何か』(岩波書店、2016年)

個性は具体例から

「灰色」はみんな違う

 自分の思いを書くのが「作文」。ただしその思いが相手(読者)に通じるかは分からない。そのため根拠を示して、明確に相手に主張するのが「小論文」です。つまり相手を共感させて納得させなければなりません。そのためには《具体例》を効果的に用いることがポイントです。

 灰色をイメージしてください。雨が降る前の曇天の濃い色をイメージした人や、水墨画が用いられるような淡い色をイメージした人など、想像上の灰色の濃淡は十人十色みな異なっています。〈色〉といった抽象的な概念を用いた場合、その感じ方や受け止め方はみなバラバラなはずです。小論文の場合、それは危険な状況です。そのため書き手の伝えたいメッセージを、読者が誤って受け取ってしまう恐れがあるからです。それを防ぐためには、具体的で丁寧な話題を添えましょう。個性を出したいときには、具体例を書くのです。

形容詞に注意しよう

【例文3】

「おいしいシュウマイ」


【例文4】

「豚のあふれる肉汁にXO醤とネギ油が香るザ★シュウマイ」(味の素)


 この2つを読み比べて、どちらが個性的ですか。「あふれる肉汁」や「ネギ油」といった固有名詞が含まれた【例文4】の方が、具体的で興味が湧きやすいと感じるのではないでしょうか。つまり具体性を高めることによって、個性を発揮することできるのです。小論文においても、安易に形容詞を用いるのではなく、具体的なエピソードや経験を書くことで書き手の個性を読者に伝えることができます。

【勉強法】

ネタ帳を作ろう


 小論文を書こうと思っても、なかなか書き始められない原因の1つに「書くことがない」があります。「楽しかった」「勉強になった」「うれしかった」などの印象しか書けないのは、それらに紐づいた経験やエピソードがないからです。それらの問題に陥らないためには、日ごろから小論文に使えそうな①具体的なエピソードや経験や②新しく得た知識やニュースを一冊のノート、③評論の用語や言いまわし、にまとめておきましょう。そして可能であれば④①~②に対する自分の意見をノートの隅にメモしておこう。それを繰り返すことで、小論文の課題を見ただけで、自分の考えが自然と湧き出てくるようになります。

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